<ざっくり言うと>
  • 9条護憲を「中国のため」で「反日」認定する人がいる。なんで「日本国」憲法護憲が反日になるねん
  • 「反日」なんて言葉が出るのは、自分の愛国だけが正しい愛国だという独善的思考による。
  • 気に食わない相手を「反日」認定するのは、戦前の「非国民」やロシアや中国の「外国の代理人」扱いと何ら変わらない、非民主主義的な言論弾圧思考でしかない。
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このブログでは何度か憲法9条についても取り上げてきました。



護憲にしろ改憲にしろ、「9条があるとこれができる、これができない」「9条を変えるとこれができる、これができない」という具体的な意見を言ってもらいたいものですが、ネットの自称愛国者たちはただ漠然としたイメージだけで批判しているように思います。例えばこれ。
>>今、誰よりも憲法9条を守りたいと願っているのは中国である。
>>自衛隊を9条で縛っておかないと尖閣諸島と琉球を奪えないからだ。
>>日本共産党と民進党と社民党は、
>>そんな中国のために必死に頑張っている。
>>さらに反日市民活動家たちは沖縄の米軍を追い出そうと懸命である。
>>すべては中国のためだ。


ひええ! なんと、百田尚樹の脳内では、9条護憲は中国のために行われている反日行為らしいです。結構いるんですよね、「9条護憲は中国に日本を獲らせるためだ」って言う人。日本国憲法9条の施行は1947年5月3日。中華人民共和国成立は1949年10月。この時点で「9条護憲は中国のため」なんてデタラメだとわかると思うんですけどね。


今のネトウヨさんたちには、気に食わないものは何でも中国の陰謀に見えるようです。自分と違う人を「外国の代理人」(=スパイ)扱いするって、ロシアやみたいな独裁国の特徴で、これ言い始めたら民主主義の終焉だと思うんですけど、日本国憲法大嫌いな百田尚樹にはそんなことどうでもいいんでしょう。


香港では国家安全維持法によって、「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた」なんて言いがかりで言論の自由が弾圧されていますが、中国大嫌いな百田尚樹は、日本を中国みたいな国にしたいんでしょうかね。



百田尚樹は「自衛隊を9条で縛っておかないと尖閣諸島と琉球を奪えない」と言います。逆に言えば、9条があれば尖閣や琉球が中国に奪われると言っているのです。しかし、それならそれだったらとっくの昔に取られているはずでしょう。


この手の人たちは、9条改憲を唱えながら、現行憲法で何ができて何ができないのか、逆に憲法をどう変えることで何ができるようになるのか、何一つ明らかにしません。ただ漠然と「9条があると尖閣や沖縄が中国に取られる」と主張するだけです。


しかし、それならば憲法9条ができてから70年以上取られていないのは何故なのでしょう? また、逆に9条のどこをどう変えると尖閣や沖縄が取られずに済むのでしょうか? 何も明らかにしていません。このように、ただ何となくのイメージだけしか主張していないのです。憲法をただ「古い」というイメージだけで改憲しようとする自民党と非常に似通っています。

↓具体的な条文の引用の1つさえなく、漠然と「古い」というイメージだけで改憲を主張する自民党の卑怯な主張。


9条護憲が「中国のため」という言いがかりも凄いですが、それを「反日」と呼ぶ神経も凄い。どうして「日本国憲法」を守ることが「反日」になるのか。むしろ論理から言えば日本国憲法を変えよう、という方が「反日」になるはずです。特に自民党なんて前文を含めて全部変えたいと公言しているのですから、現在の日本という国の在り方を否定しようとしているわけです。逆に護憲派は現在の日本の形を守ろうというのですから、現在の日本を愛しているのだと言うことができます。


つまり、護憲派の方が「愛国的」で、改憲派の方が「反日的」と言うことも十分可能なのですが、彼らはそんな風には考えません。なぜなら、自分たちの考える「愛国」だけが正しい愛国だと思っているからです。だから自分に反する考えは「反日」に見えるのです。実に独善的な考え方であり、まさに戦前戦中に、戦争に反対する者を「非国民」と呼んだ思想と寸分も変わりません。


さらに「反日市民活動家たちは沖縄の米軍を追い出そうと懸命である」と言っていますが、沖縄は日本です。その沖縄の面積の10%、沖縄本島に限定すれば15%もを外国の軍隊である米軍の基地が占めています。(沖縄県HP参照


押し付け憲法だの反日だの言うくせに、米国に押し付けられた米軍基地は、日本の土地を与え、それどころか「思いやり予算」まで払っているのです。米軍のために沖縄の土地を与えていることこそ、「反沖縄」ひいては「反日」、それどころか「売国」と言うことだってできます。ところが「愛国」的であるはずの人たちは、沖縄を米軍に使わせるのは平気なのです。


繰り返しになりますが、彼らの言う「反日」という言葉は、「自分に逆らう奴」という以上の意味は全く持ちません。独善的に自分の「愛国」だけが正しい「愛国」だと思っているので、それ以外は「反日」に見えるという偏狭な考え方だと言わざるを得ません。


だから百田尚樹は「沖縄の新聞を潰さないといけない」なんてことを平気で言えるのです。こういう人たちは沖縄県民のための沖縄なんて考えていません。求めているのは中央政府の言うことをおとなしく聞く、負担を押し付けられる本州の付属品としての沖縄だけです。彼らは、そこに暮らす人のことなど知ったことではないのです。


外国に対して「親日的な国」とか「反日的な国」とか言うのはまだわかります。しかし、日本人に対して「反日」という言葉を使う者の言うことを聞いてはなりません。それは政府の方針に反対する国民を「非国民」と呼んで攻撃した戦前と何一つ変わらず、都合の悪いものを「外国の代理人」扱いするロシアのような独裁国と何一つ変わらないのです。


「戦前回帰などあり得ない」と言う人もいますが、「反日」という言葉が横行するのは、「非国民」という言葉が「反日」と置き換えられただけで、まぎれもなく戦前回帰の兆候です。


「愛国心」の在り方は自由です。自分の考える「愛国」だけが正しい愛国だと思い込んで他人を「反日」扱いするようなものは「愛国心」でもなんでもなく、ゆがんだ「自己愛」に過ぎません。彼らが好きなのは自分の思想であり、今目の前にあるこの日本という国ではありません。


「愛国心」の皮を被った醜くゆがんだ「自己愛」の押しつけには、明確にNOと言わなければなりません。全員が同じ形の「愛国心」を強要された時代何が起きたか、小学校でまともに歴史の勉強をした人なら知っているはずです。

==愛国カルトに騙されないために==

・視点の置き方によって「愛国」「反日」なんてものはいくらでも変わりうると知ろう

・他人を「反日」と呼ぶ独善的「愛国心」は「愛国」ではなく「自己愛」に過ぎないと知ろう。

・他人を反日認定する輩を信じてはならない。

手塚マンガで憲法九条を読む
手塚治虫
子どもの未来社
2018-06-04

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)
中沢 新一
集英社
2006-08-12

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