『アゴラ』での八幡和郎氏による蓮舫批判の続きです(前回前々回)。今回は八幡氏が繰り返し蓮舫氏に求めている「国家への忠誠心」について考えてみたいと思います。外国人や帰化人に「忠誠」を求める人たちにも考えてもらいたい問題ですね。

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踏み絵のような「条件」


八幡氏は、蓮舫氏が首相になれる条件として、以下の5つを提案します。

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①国籍選択の経緯を説明し、
②現在や国籍選択後に二重国籍でなかったことを証明し、
③日台・日中の懸案問題について所見を明確に述べ、
④台湾の親戚などについても情報を公開し、
⑤日本国への忠誠や愛国心について決意を示す

アゴラ2016年8月12日参照

これを見て私は「踏み絵か?」と思ってしまいました。


特に④の台湾の親戚についての情報を公開って、完全にプライベートな問題です。親戚が何だというんですかね? 親戚に蒋介石がいようが毛沢東がいようが、ナポレオンがいようがヒトラーがいようが関係ないでしょうに。 仮に親戚に台湾総統でもいたら、それを理由にスパイ扱いするんですかね? 前回の記事でも述べましたが、果たして蓮舫氏が欧米系とのハーフだった場合、似たようなことを求めていたでしょうか。私は疑わしいと思いますね。中国系である蓮舫氏に対する差別意識からきているようにしか思えません。



アメリカの「国家への忠誠」は憲法への忠誠


そして⑤の「日本国への忠誠や愛国心について決意を示す」って、具体的に何やれっていうんですかね? 


アメリカじゃ帰化するときに「忠誠の誓い」をしますが、その内容は以下のようなものです。

・アメリカ合衆国憲法への忠誠の誓い
・以前保持したすべての外国への忠誠の放棄の誓い
・国内外の敵からアメリカ合衆国憲法を守る誓い
・法律が定めた場合、兵役に従事する約束
・国家の大事の際、法律が定めた市民としての義務を果たす約束

憲法への忠誠の誓い」と「国内外の敵から憲法を守る誓い」が含まれています。


となると、国家への忠誠というのは、国家を形作っている憲法への忠誠ということになると思いますが、これを日本に当てはめれば、「日本国憲法はみっともない」「前文を含めて全部変えたい」と言っているどっかの政党の党首は日本国家への忠誠心失格ですね。そんな「日本国家への忠誠心」が全然ないやつに、野党第一党党首どころか首相やらせていていいんですかね。

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↑日本国憲法を誹謗するこの男は「国家への忠誠心」がないってことになるはずだが。



「よそ者」に「忠誠心を糾す」のは普通か?


そもそもすでに帰化している人に対し、他の日本人に求めないようなことを求めるのは「法の下の平等」という観点からしてもどうかと思いますが、八幡氏はこう主張します。

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地域社会でも企業でも、よそ者や途中入社組が忠誠心を問われ、新参者が地域や会社を愛していると決意を述べるのは当たり前だと思うからだ。もちろん、新参者だからというだけで排除するのはダメだが、愛情や忠誠を糾すのは普通のことだ。

普通じゃないよ!


地域社会でも企業でもよそ者が忠誠心を問われるのは当たり前と八幡氏は主張しますが、私はこれまでそんなの問われたこと一度もありませんぞ!? 


東京に出てきて、東京への愛情や忠誠心を糾されたことがある地方出身者なんていますかね?

転職先で忠誠心を問われて「会社を愛していると決意を述べる」ことを求められた人なんていますかね?



まるで「東京に出てきたら巨人を応援しないといけない」みたいな主張です。別に大阪出身者が東京に出てきたってそのまま阪神を応援してもいいじゃないか。広島出身者が東京でもカープを応援してもいいじゃないか。八幡和郎氏は、広島出身者でも、東京に出てきたら巨人を応援しないといけないと思ってるんですかね?


第一、八幡氏は「よそ者」や「新参者」を挙げていますが、蓮舫氏は「よそ者」でも「新参者」でもなかろう


蓮舫氏は父親は台湾人ですが、母親は日本人で、日本生まれ日本育ち。当時の国籍法では出生当初台湾籍でしたが、現在の国籍法なら生まれたときから日本国籍を取得できていました。これで「よそ者」や「新参者」はなかろうに。(※当時の国籍法ではハーフは強制的に父親の国籍になっていました。現在の国籍法では二重国籍となり、成人するまでにどちらかを選択することになっています)


八幡氏は地方選挙での地元以外の出身の政治家を例に出します。

地方選挙でも地元出身者ででない人が出馬したら、選挙にあたっても、就任してからあとも、ことあるごとに第二の故郷への愛着を語り、骨を埋めて頑張る覚悟を誓う。

そりゃあ、そうした方が票がとれるからだろ?


地元出身者と別の地方の出身者だったら、地元出身者の方が地元のことをよくわかっているんじゃないかと思うから、地元出身者の方が有利なんじゃないんですかね。だから、「私はこの町のことをよくわかってますよ」ということを示す。その街のことをわかっていない人に票を入れるわけないですからね。地元の人は、立候補者には地元の問題への理解とその解決を求めているのであって、口で「私はこの街が好きです」「骨を埋めて頑張ります」なんて言ってほしいわけじゃないと思いますがね。


一方、何度も述べているように、蓮舫氏は日本生まれ日本育ちです。つまり、日本は地元です。必要なことは日本が抱える問題への理解とそれを解決する能力であって、それを示すことが日本への愛情や政治家としてのやる気や資質を示すことになるでしょう。


それを、口先での愛国心だの忠誠心だの求めるなど、結局蓮舫を批判したいというのがあって、そこに理屈をこねているだけなので、このような矛盾が生じるのでしょう。



自分が気に食わない相手を「反日」扱い


そのあとの八幡氏の主張も身勝手と言わざるを得ません。

それは良くて、どうして、日本国家に対して帰化人に同じことを要求してはいけないのだろうか。

反体制日本人は不思議に郷土愛はOK、愛国はNGだが、少なくとも近代国家において郷土も会社も大事だが、それ以上に国家が大事なのは常識だ。

反日的日本人には不思議に護憲派が多いが、それなら、地域や企業の決まりが憲法に優先して良いとはおっしゃらないだろう。単に保守政権が気に入らないから日本を破壊しようとしているだけなのだと思う。

「少なくとも近代国家において郷土も会社も大事だが、それ以上に国家が大事なのは常識だ」とか、常識の欠片もない八幡和郎が勝手に常識を騙らないでほしいですし、八幡の妄想する「反体制日本人」というのがどういう人を指しているのかはわかりませんが、「愛国はNG」ではなく、「『愛国』を強要することがNG」なのだと思いますけどね。


「愛国心」なんていくらでも形があるでしょうに、一定の形の「愛国心」を他人に求めることが問題なんですよ。


「反日的日本人」なんて言葉を使っていることからも、八幡氏が自分の考えるのと同じ「愛国心」を他人に求め、それ以外を「反日」とみなす人であることがわかります。


そして、愛国心を求めることをNGというと、「日本を破壊しようとしている」とは、意味が分からない。先ほどの「国家への忠誠」を「憲法への忠誠」とみなす考え方からすると、改憲派こそ国家への忠誠心がなく、現在の「日本国」を破壊しようとしている勢力だと思いますけどね。


結論として、八幡氏は実態もよくわからない「国家への忠誠」を求め、自分の考えるような「愛国心」を相手に押し付けているだけになっています。


そうやって外国人のみならず、日本生まれ日本育ちで帰化した人間まで「よそ者」「新参者」とみなして、自分たちとは違う存在だと考える。偏狭なナショナリズムです。


八幡氏のように、他人に「愛国心」だの「国家への忠誠」だのを求める人は、いったいどういうものが「愛国心」であり「国家への忠誠」なのか考えてみてください。


この国は言論の自由が保障されている国です。「愛国心」にもいろいろな考え方があります。例えば靖国問題一つとっても、靖国に参拝することが愛国心の示し方だと思っている人もいれば、A級戦犯を祀っているところに参拝するなんてとんでもないと思っている人もいます。どっちも日本をつぶそうと思っているのではなく、何が日本のためになるかという考え方が違うだけです。


結局のところ、愛国心とか国家への忠誠とか、人によって考え方が異なります。自分を愛国的な人間だと思うのは勝手ですが、その自分が考える形の「愛国心」を他人に押し付けるべきじゃありませんし、自分の考えを「愛国的」だと思うあまり、それに相反する考えを「反日的だ」などと言う人のはあまりに独善的で了見の狭いというしかありません。


さらに次回に続きます。

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