蓮舫は母親が日本人で、日本生まれ日本育ちです。しかし、それにもかかわらず世の中には「二重国籍の時点で日本人ではない」とか「二重国籍者は日本国籍を有しないと判断される」とかデタラメを言う人間までいることに驚愕を禁じえません。意味不明すぎるんですけど。


さらに、中には「二重国籍」ではなく、「そもそも日本国籍ではないのでは」とまで言い出す人までいる始末。参議院議員に立候補する際に戸籍を選管に提出しないといけないので、日本国籍を持っていないっていうのは、絶対にありえないんですけどね。

↓このブログに来たコメント。まさか「そもそも日本国籍ではないのでは?」と言い出す人がいるとは…
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さて、蓮舫氏は日本と台湾の国籍を持っていたわけですが、ネトウヨたちは「台湾は親日」「台湾と仲良くしよう」などと言い続けてきました(参考例)。そのため、蓮舫が台湾との二重国籍だと叩きづらいわけです。 (中国と台湾の区別もついていない奴も大勢いたけど)


そこで彼らが編み出したのが、蓮舫の三重国籍四重国籍疑惑で、蓮舫が中国と韓国の国籍まで持っている、というアクロバティックな主張です。

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「中国国籍」を拡大解釈するまとめサイトや『アゴラ』


まず、蓮舫の中国国籍疑惑ですが、これは過去に蓮舫が自分のことを「中国籍」と言ったことがある、というのが根拠になっているようです。

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(↑『ハムスター速報』)

1993年の朝日新聞で、自分のことを「在日の中国国籍」と答えていた、というものです。その時の記事はこれです。

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アゴラ

ここには確かに、「蓮舫さんは『在日の中国国籍のものとしてアジアからの視点にこだわりたい』と話した」とあります。


しかし、ここの発言が蓮舫氏の言葉を直接引用したものであるかはかなり疑問です。私も以前ある件でとある新聞の取材を受けたことがありますが、指定字数に纏めるためか、相当省略されていて、私が言った内容とかなり変わっていたことがありました。その時の経験から考えると、これも「台湾にルーツを持つ日本人として」みたいなことを言ったのを「在日の中国国籍」なんて書いた可能性さえあると思います。


仮に直接「在日の中国国籍」という言葉を言ったとしても、「中華民国」という意味で「中国」と言ったのかも知れませんし、最近は「台湾と中国は別だ」という機運が高まっていますが、当時は台湾自身が「中国は一つ」という認識だったので、「中国」と言ったのかもしれません。


実のところ、この記事が載った1993年ごろ、台湾人において「私は台湾人だ」という意識を持っていた人はかなり少なく、『フォーカス台湾』に掲載されている世論調査によれば、1993年には「私は台湾人だ」と答えたのは20.2%しかおらず、「私は中国人だ」の26.2%を下回っていました。さらに、「私は中国人でも台湾人でもある」が44.6%で、圧倒的に多かったのです。

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参照

だから1993年当時、台湾ルーツの蓮舫が自らのルーツを「中国」と表現することは何ら不思議はないことです。


蓮舫が3重・4重国籍ではないと断言できるこれだけの理由


上記新聞記事インタビューの実際の発言内容は今では知ることはできませんが、しかし、蓮舫の中華人民共和国国籍保有はありえない、ということだけは断言できます。


理由1:父親は台湾人である


蓮舫の父親は台湾人で、母親は日本人です。ですので、蓮舫が先天的に中華人民共和国国籍を持っていることはあり得ません。もし中国国籍を取るなら後天的にということになりますが、日本国籍を維持しながら中華人民共和国国籍も保有することは、以下の理由から不可能です。

理由2:日中の国籍法


まず第一に、中国の国籍法には以下のように書かれています。

第三条
中華人民共和国は中国の公民が二重国籍を持つことをみとめない。

第八条
中国国籍への入籍を申請して許可された者は、中国の国籍を取得する。中国の国籍入籍を許可された者は、もはや外国の国籍を留保することができない。

第九条
外国に定住している中国公民で、自己の意思によって外国の国籍に入籍し又は取得しした者は自動的に中国国籍を失う。

基本的には日本の国籍法と考え方は違いませんが、中国国籍のものが、自己の意思によって外国の国籍を取得した場合は、自動的に中国国籍を失います。離脱手続きは必要ありません。


これは日本の国籍法でも同じで、第十一条一に日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」とあります。


蓮舫が生まれたときに台湾籍だったことに疑う余地はありません。そして1985年、18の時に日本国籍を取得しています。仮にその前に中国国籍を取得していた場合、日本国籍を取得した時点で中国国籍を失いますし、日本国籍取得後に中国国籍を取得した場合、日本国籍を失います。


蓮舫は日台ハーフであり、台湾には「外国籍の取得したら台湾の国籍を失う」という法律がないために二重国籍状態が続いていましたが、後天的に日本国籍と中国国籍を同時に保有することは不可能です。


台湾の国籍法では、「自ら外国国籍の取得を申請」した場合、「内政部の許可を得て、中華民国国籍を喪失することが出来る」とされており、日本や中国と違い、外国籍取得により自動的に国籍が喪失されることはありません)

理由3:中国の国籍取得には中国在住が必要


蓮舫が中国籍でない第2の理由に、中国国籍取得の困難さがあります。


中国国籍を取得するには、中国国内での居住登記証明が必要です(参照)。蓮舫が中国で暮らしていたのは、北京大学に留学していた1995年から1997年までの2年間だけなので、蓮舫が1993年の時点で中国国籍を取得していた、なんてことはあり得ないわけです。

理由4:「子供を利用しての国籍取得」のウソ


中には、なんとかして蓮舫を中国国籍にしようと、こんな噂をばら撒く人もいます。




この人物は、「中国で出産すると、親がいかなる国籍でも中国籍になる(多国籍を選択できない)」制度を利用し、子供を中国で出産して、子供を利用して中国籍を得た、と言いたいそうです。


断言しますが、あり得ません


なぜこの人物が、「中国で出産すると中国国籍になる」なんて変なことを言い出したのか知りませんが、言うまでもなく、中国の国籍法は血統主義です。アメリカは出生地主義なので、米国内で出産すれば、子供は米国籍を取得できますが、日本人が中国で出産したって、子供は中国籍にはなりません。


しかも、蓮舫が子供を産んだのは1997年。蓮舫の「中国国籍」発言が朝日新聞に載ったのが1993年なので、やはり時系列的に絶対にありえないわけです。


以上の理由から、蓮舫が中国籍も保有しているという噂は、絶対にないと断言できます。


驚くべきことに、産経新聞は蓮舫の記者会見で「中国籍も持っているとネットで見たが真実か」と質問していました。ネットデマを記者会見で質問してしまう産経新聞…。産経さん、せめて記者会見にはもうちょっとまともな人材を派遣しましょうよ。

「駐韓大使館でパスポートを取得したから韓国籍」という荒唐無稽なデマ


最後に、蓮舫の韓国籍疑惑ですが、これは驚くほど幼稚なデマです。蓮舫が公開した台湾のパスポートの発行元が中華民国駐韓国大使館だったというだけのものです。

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これをネトウヨデマサイトとして有名なnetgeekが、
蓮舫の家系、特に母親の出自については不明なところが多い。実は台湾の国籍を持ちながら韓国に居住していたためパスポートの発行が最寄りの駐韓大使館になった。そうであれば韓国の国籍も持っていた可能性があり、四重国籍という可能性も脳裏をよぎる
などと書き、
蓮舫はこの不可解な点について、きちんと国民に説明責任を果たす義務がある。改めて親にも自分の出自を確認しておく必要があるだろう
と、これまた「余計なお世話だろう」というどーしようもない記事を書いていました。どうして発行元が中華民国駐韓国大使館だった理由まで説明する義務があるねん…。単に「自分が知りたい」「叩く材料が欲しい」というだけのことを「説明責任」だの「義務」だの言うのはやめてもらいたいものです(「主観と客観を区別できないネトウヨ」の記事を参照)。


まあ、一応理屈を説明してあげますと、日本はアメリカに習って台湾と断交したため、日本には台湾大使館がないんですよ。そのため、台湾は「中華民国駐韓国大使館東京事務所」という複雑なものを作って、そこでパスポートの発行などを行っていたんです。ですのでよく見れば上のパスポートは ISSUED AT(発行地)のところにTOKYOと書いてありますね。EMBASSY OF THE REPUBLIC OF CHINA SEOUL (TOKYO) とも書いてあります。つまり、このパスポートの発行は日本というわけです。

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そもそも「中華民国駐韓国大使館」なのに、どうして韓国籍なんて話が出てくるんでしょうね。この理屈なら、
韓国内でパスポートを紛失して在韓国日本大使館からパスポートを再発行してもらった人は、韓国籍になってしまいますね


そして、この酷いデマを、有名デマッターである500円などが拡散するといういつもの黄金パターン。

にかく蓮舫を「反日」にしたいがために、無理やり「実は中国人だった」「実は韓国人だった」とやろうとしているのが見え見えです。


なお、韓国の国籍法では、韓国に5年以上住んでいないと帰化は認められないので、蓮舫が韓国籍というのはその点でもありえません。


以上のことから、蓮舫が大陸中国や韓国の国籍を持っているというのは、絶対にありえないと断言できます。


結局のところ、「理由があるから叩く」のではなく、「叩くために理由を作る」のがネトウヨであることがはっきりとわかります。


人が何かに怒っているのを見たら、その人が「理由がある方叩いている」人なのか、「叩きたいから理由を作る」人なのかは、見極める必要があるでしょう。少なくとも、今回の件で、三重国籍だとか四重国籍だとか、「日本国籍じゃない」とか、「二重国籍は日本人じゃない」とか言っている人は、「叩きたいから理由を作る」人であることは疑う余地がありません。


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