<ざっくり言うと>
  • 日本で提案されている夫婦別姓が「中国韓国に倣うものだ」というのは無知、もしくは偏見による妄想。
  • 韓国は夫婦同姓が選べず、中国や台湾は伝統的には結婚で姓が変わることはなく、近年夫婦同姓も選べるようになった。日本で提案されている「選択的夫婦別姓」とは異なる。
  • 夫婦同姓義務がある国は全世界で日本1ヵ国しかなく、ドイツやイタリアのように選択的夫婦別姓の国や、ベルギーやフランスのように結婚で姓が変わらない国がほとんど。
  • 安倍晋三などは選択的夫婦別姓で家族が壊れると主張するが、それならば日本以外の国はほとんど全て家族が崩壊していないとおかしい。
  • そもそも明治より前は今と苗字や名前の概念自体が違ったし、明治になっても明治9年には夫婦別姓が法律で定められている。現在の夫婦同姓は明治31年に定められた制度にすぎず、日本の伝統でもなんでもない。
↓フランスやベルギーやルクセンブルクやカナダのケベック州やマレーシアやベトナムなども原則的に夫婦別姓なのだが、中国と韓国だけを引き合いに出し、ネトウヨの中国韓国への反発を夫婦別姓への反対に利用する人。無知なのか、中韓を出してネトウヨにアピールしたいのかのどちらか、もしくはその両方だろう。
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なぜか「保守」を自称する人は選択的夫婦別姓に反対ですね。何を「保守」しているのかよく分からないのですが、百田尚樹がこんなツイートをしていました。
>>日本は昔から夫婦同姓。
>>中国と韓国は昔から夫婦別姓。


これのツイートに対し、百田信者からは百田尚樹応援メッセージと中韓批判・夫婦別姓批判が山ほど飛び出しました。
>>これを主張してる人は間違いなく韓国系 >>夫婦別姓って結局外国人労働者と結婚させやすくして、永住権を与えるためでしょ。
>>あっというまに在日中国人に参政権プレゼントだ。
 >>夫婦別姓を訴える人って、純粋な日本人ではないですよね  >>外国籍(帰化・在日も含む)による内政干渉ですね。 >>中国・韓国の家族で姓が違うのは嫁に来た者のみ、言わば嫁差別!


「夫婦別姓を唱える人=中国人か韓国人」みたいな妄想ツイートや、「夫婦別姓って結局外国人労働者と結婚させやすくして、永住権を与えるため」などという何を言っているのか理解不能な発言が多く見受けられます。なんで夫婦別姓だと外国人労働者と結婚しやすくなるんだ…。意味不明すぎる…。


蓮舫の国籍に文句を言っていた八幡和郎も、「現在提案されている夫婦別姓」「いかにも中国や韓国のやり方に従う」ものだと言っています。

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八幡和郎のHP参照

もちろん大嘘です。

この手の輩は何でもいいから「中国がー」「韓国がー」って言えば「そうだそうだ!」って言ってくれる奴がいるので、何にも調べずに何にも考えずにこんなことを言うんでしょうけど、完全に間違いまくっています。

・日本で議論されているのは「選択的」、中韓は「強制的」別姓


日本で議論されている夫婦別姓については、以前もこのブログで記事にしたことがありますが()、日本で議論されているものは、基本的に選択的夫婦別姓なんです。2015年に最高裁裁判が行われたものも、選択的夫婦別姓でした。96年に国の法制審議会が民法の改正案を答申した際にも、提言されたのは、希望すれば別姓を認める「選択的夫婦別姓」でした。福島瑞穂議員などが主張しているのも、当然選択的夫婦別姓です。


一方、中国や韓国の伝統的な夫婦別姓は、夫婦が同じ苗字を名乗ることができない強制的な夫婦別姓であり、日本で提案されている選択的夫婦別姓とは全く異なります。(正確に言うと、中国や台湾では現在では夫婦同姓を選ぶことも可能になった)


選択的夫婦別姓を、「中国や韓国に倣うもの」だなんて言う八幡和郎や、中国韓国の夫婦別姓を引き合いに出す百田尚樹、それに賛意を示す連中は、全員基本の「キ」がわかっていません。


・夫婦同姓強制は世界で日本だけ


中国や韓国を出すだけで批判になると思っている百田尚樹や八幡和郎のような人は知らないのかもしれませんが、世界では夫婦が別姓を選択できるのは当たり前のことで、日本政府は2015年10月の答弁書「現在把握している限りにおいては、『法律で夫婦の姓を同姓とするように義務付けている国』は、我が国のほかには承知していない」と述べています。さらに、NHKによると、夫婦同姓を法律で義務付けている国は、世界で今や日本だけだそうです。

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NHK時事公論

実際、世界を見れば、イギリス、アイルランド、オランダ、ドイツ、リヒテンシュタイン、イタリアなどは選択的夫婦別姓で、フランスやベルギーは原則夫婦別姓。アジアやアフリカを見ても、同姓も別姓も選べる国もあれば、夫婦別姓の国も多いです。



つまり、日本で提言されている選択的夫婦別姓は、「中国韓国に倣う」どころか中国韓国とは全く異なるものであるうえ、夫婦別姓は中国韓国だけじゃないし、選択的夫婦別姓は世界中で見られるものです。


百田尚樹や八幡和郎は、どうして夫婦別姓で中国や韓国を引き合いに出すのに、同じように夫婦別姓のフランスとかベルギーとかの名前は出さないんでしょう? 簡単ですね。理由は2つ。

①無知だから夫婦別姓は韓国と中国ぐらいしかないと思っている。

または

②フランスやベルギーの名前を出すとネトウヨにアピールできない。

このどちらかですね。


百田支持者たちは夫婦別姓で国が崩壊するとか言ってますし、あの安倍晋三も選択的夫婦別姓を「家族を崩壊させようとする左翼のドグマ」なんて言っていましたが、選択的夫婦別姓で家族や国が崩壊するなら、日本以外すべての国が崩壊しているはずなわけです。日本以外のすべての国は左翼思想に染まってるんですかね? (安倍晋三って、よくまあこんな頭で総理大臣になれましたね)


選択的夫婦別姓を議論する際に中国韓国を引き合いに出す奴は、それだけで信頼に値しない奴だと断言していいです。


「伝統」「昔から」という嘘


そして、伝統だのなんだの言ってる人たちについても、何を言ってるんだって感じです。


そもそも明治になる前は今の日本と名前の在り方自体が大きく違います。説明するのが複雑なのでこういうページとかとか読んで調べてもらいたいですが、今は同じ意味で使われる「氏」と「姓」と「名字」は元々は別の概念でしたし、信長の名前は「織田三郎藤原信長」のように「氏」「通称」「本姓」「実名」で構成されていたり、幕末から明治にかけても、「桂小五郎」が「木戸孝允」に改名したり、「山口一」が「斎藤一」になり、最後には「藤田五郎」になるなど、そもそも今と苗字や名前の感性が全然違いました。結婚したわけでもないのに苗字が変わっちゃうんですからね。





さらに、1876年(明治9年)には夫婦別姓が法律で義務化されています。つまり、日本は夫婦同姓で定まっていたわけではなく、夫婦同姓が義務になるのは1889年(明治31年)からです。現在のような制度になったのは明治も半ばになってからであり、夫婦別姓が義務の時代さえあったのですから、日本の歴史から見れば、必ずしも夫婦同姓義務はずっと昔から受け継がれてきた伝統というわけでもないのです。このことは法務省のHPにも載っています。



明治以降、戸籍制度を作る上でそういうことはなくなってしまいましたが、伝統と言うのならば、現在の「名字・名前」のスタイルや「夫婦同姓義務」なんかより、幼名を名乗ったり名前が変わったり選択的夫婦別姓だったりする方がよっぽど歴史が長いのです。(というより、明治以前には法律ではなく慣習として行われていただけなので、同性を名乗ろうが別姓を名乗ろうが咎められることなどなかった)


日本の名前の制度について、「伝統」なんてものを持ち出したら、どこまで遡るかで全く解釈が異なってしまいます。なります。結局、強制的夫婦同姓を「伝統」なんて呼ぶのは、「自分が知ってる現行制度」以上の意味はありません。


(その一方で、70年以上続いている現行制度である日本国憲法を、彼らは決して「伝統」とは呼ばない。逆に55年しかもたなかった大日本帝国憲法や教育勅語を伝統扱いしたりする。実にご都合主義な奴らである)


まとめ


以上をまとめますと、

・夫婦別姓が「中韓に倣うもの」というのは大嘘
(日本で議論されているのは選択的夫婦別姓で、中韓の強制的夫婦別姓とは異なる)
(同姓強制は日本のみで、ほとんどの国が選択的夫婦別姓)
 
・夫婦別姓で「家族や国が崩壊する」というのは大嘘
(選択的夫婦別姓で国が崩壊するなら、日本以外すべての国が崩壊しているはずである)

・夫婦同姓強制が「伝統」というのは不正確
(明治31年以降の制度で、それ以前は必ずしも一様ではない)


私は、夫婦同姓だろうが別姓だろうが、本人の好きにすればいいという考え方なので、他人に「同性じゃなくちゃだめだ」と強制したい人の気持ちはよく理解できません。


もしもそれが論理性のある主張ならいいんですよが、百田尚樹とか八幡和郎とか安倍晋三とかは、日本で議論されているのは選択的夫婦別姓なのに、強制的夫婦別姓の中国韓国を引き合いに出したり、日本以外の世界中が夫婦別姓を認めているのに、中国韓国を持ち出して嫌韓・反中感情を利用しようとしたり、夫婦別姓で家族が崩壊するとか国が崩壊するとか言ったり、左翼のドグマとか、伝統が崩壊するとか言ったりして、全く何の論理性も感じられません。


私は百田尚樹にはブロックされているんでメッセージを残せませんが、誰か百田尚樹に「夫婦同姓強制は世界中で日本だけ」という日本政府の答弁書を見せてやってもらえませんか? 百田先生はなんて答えますかね? どうせ無視するでしょうけど。



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