<ざっくり言うと>
- テレビに映った姿が元気である程度のことを理由に「安田純平の誘拐は自作自演の身代金詐欺だ」と言い出すアホが多発。
- テレビに映った姿を見ただけで何かを判断できるわけはないし、テレビを見ただけのド素人が気づくような矛盾ならば、現場の人や専門家がとっくに指摘している。
- 安田純平氏の誘拐が自作自演であるとしたら、シリア人権監視団、トルコ政府、カタール政府、日本政府がこぞって騙されたことになり、専門家の彼らが騙されて見抜けなかった真実を、日本のお茶の間でテレビを見ていただけのド素人が見抜いたことになる。そんなことがありうるか、常識的な判断力があればわかるはず。
- 「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と思った時、騙されているのは99%自分の方である。
- 本当に世間が騙されているときに真実を見抜くのは、専門家か当事者か取材をしたジャーナリストであり、テレビやネットを見ているだけのド素人ではない。
↓極右ゴミクズデマ雑誌『WiLL』もこのデマを垂れ流して敗訴している。
素人の考えで専門家の話を聞かずに妄想するなかれ
何かあると、すぐに自作自演扱いするのが陰謀論者やネトウヨです。もっとも有名なものが、「アポロ11号月面着陸捏造論」や「9.11アメリカ自作自演説」あたりですね。これらはどれも専門知識などない素人が浅知恵を振りかざして、「これがおかしい」「ここが矛盾している」などと指摘し、「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と思い込む幼稚な優越感に由来するしています。
どんな陰謀論がどういう理由で唱えられているのかはネットを検索してもらえればいくらでも出てきますが、アポロ11号の例を挙げますと、「空気がなくて風がないはずなのに星条旗が揺れているからおかしい、捏造だ」というものがあります。
↓風がないのにはためく月面の星条旗
しかし、実際には飛行士が旗を立てる際に慣性で揺れているにすぎません。月面では空気がないため空気抵抗が起きず、慣性によって旗はちょっとした振動でも、むしろ地球より大きく揺れるのです。この辺は探せば実験動画も見つかると思うので、興味のある方は「アポロ 捏造 デマ 検証」などのワードで検索してみてください。
他にも「写真に星が写っていないから捏造」とか、「2つの物の影の角度が異なっているのは光源が複数ある証拠。捏造」とか、いろいろあります。


星が写っていないのは露出の問題ですし、影の角度が異なっているのは単に地形やパースの問題です。というか、もし光源が2つあるんだったら、2つの物体の影の角度が異なるんじゃなくて、1つの物体から影が複数伸びるはずだろ…。頭悪すぎる…。
「月の表面は真空で氷点下だから、月についた瞬間に宇宙船がぶっ壊れる」なんて言ってる人も見たことがあります。なんで月についた瞬間に壊れるんだ…。意味が分からん…。真空や氷点下で壊れるなら、月に着く前に壊れてるはずだし、人工衛星も小惑星探査の宇宙船も全部ぶっ壊れてるはずだろ…。第一、真空(0気圧)程度で宇宙船が壊れるわけないし、氷点下で宇宙船が壊れるなら北海道でも家が倒壊しまくってるだろ…。どこから来たんだ? 真空で氷点下だと月についた瞬間に宇宙船がぶっ壊れるなんて意味不明な発想? アポロ11号捏造論を唱える人でも、こんな意味不明なことを言う奴は初めて見た。
@kuwabarakazu 悪魔の照明か?
— 焼鳥丸 (@berufegooru) 2015年7月28日
月の表面って真空圧の上に氷点下いってるから、月に付いた瞬間に宇宙船がぶっ壊れる、外出た瞬間に宇宙服ぶっ壊れるから下手すりゃジャミラ状態。カメラ撮影が一番無理。
今の技術でさえ無理。
もしもアポロ11号が捏造だったら、対立していたソ連も含め、世界中の科学者やマスコミが騙された、もしくはアメリカ政府の捏造に協力していることになります。そして、ソ連や、世界中の専門家たちが騙されているのに、彼等よりもはるかに持っている情報が少ない一般人が、公表されている写真や映像だけを手掛かりに、ソ連も含めて世界中の専門家が気づけなかった、もしくは隠し通してきた真実を知ったということになります。
そんなことがあるかどうか、常識的に考えればわかりますよね。
とまあ、アポロの話が長くなってしまいましたが、素人が小賢しく「おかしい、矛盾だ、捏造だ!」などと言って、「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と思い込むのは大変アホらしいですし危険なことです。
安田順平氏の名誉を毀損する陰謀論者のバカ達
さて、安田純平氏がシリアで3年にわたり拘束されていた事件でも、ネットの素人バカたちの自作自演説が既に始まっていました。彼等、いつまでたっても脳みそが一歩も進歩しないんですね。
このサイトにも、こんなコメントが来ました。

>>デマを流す連中も大概だが、安田の拘束は明らかに自作自演の身代金詐欺だろ。
「デマを流す連中も大概だが」というセリフから、これを書き込んだ本人は、「自分はデマになんか騙されない人間だ」という自負があるものと思われます。それで「明らかに自作自演だ」とか言ってるんですから、単にデマに騙されてる連中よりもさらにタチが悪そうですね。
さて、その根拠が実に滑稽。
>>本人は1メートル幅の狭い独房で監禁されてたというが、あれが3年間もテロリストに拘束された人間の顔かよ!?
>>常人なら筋力が衰えて、マトモに歩けませんよ
バカ丸出し!!!
まず、健康状態については、監禁の状態によってはもともとそこまで健康を損なっていなかった可能性もありますし、シリア人権監視団によれば、安田氏が解放されたのは発表の4日前。テレビに本人が写ったのは解放から5日目ということになるので、5日間の間にある程度回復したという可能性もあります。いずれにしろ、テレビで見て「健康すぎる」なんてのは何の根拠にもなりません。

次に、「3年間拘束されていたら、常人なら筋肉が衰えてまともに歩けない」なんてのは、アポロ11号の捏造論と同じく、素人が勝手に脳内で考えた何の根拠にもならない憶測です。
アメリカで3人の女性が10年間日の当たらない地下室に監禁されていたという事件がありましたが、そのうちの1人が監禁場所を抜け出して自ら警察に通報しました(参照)。もし3年間拘束されていたら筋力が衰えてまともに歩けないのであれば、10年間拘束されていたのに逃げ出して自ら警察に通報したこの事件も、被害者の捏造なんですかね? じゃあ、捕まった犯人は何だったんですかね?
勝手に素人が何の根拠もなく自分の脳内の妄想だけで「3年間拘束されていたら、筋肉が衰えてまともに歩けないはずだ」とか、バカバカしいにもほどがある。そんなことテレビを見ただけの他人が判断できるわけがない。
また、ヌスラ戦線が安田氏誘拐を否定したという情報については、そもそもその情報が真実なのかもわかりませんし、仮に真実だとしてもヌスラ戦線が嘘をついている可能性もあります。自作自演論者は、なんで誘拐犯側の発言は鵜呑みにするんですかね?? ヌスラ戦線以外の組織だった可能性もあるでしょうし。
そして何より、もしも安田氏拘束が身代金目当ての自作自演ならば、その安田氏の自作自演に大勢が協力し、シリア人権監視団も、トルコ政府も、カタール政府も、日本政府も騙され続け、今も騙され続けているということになります。それらのエキスパートたちが騙され続けているのに、テレビで映像を見ただけのお茶の間の素人が、自作自演という真実を知ったというのでしょうか?
そんなことがありうるかどうか、常識的に考えたらわかりますよね。
素人の妄想は害以外何一つない
以前このブログで取り上げた「沖縄ヘリコプター部品落下自作自演説」も、
「ヘリの高さから落ちたのなら部品は粉々になってるはずだ」とか
「部品は213gしかないからドーンという音はしないはずだ」とか
何の根拠もない素人が脳内で考えた妄想を根拠にしていました。詳細はリンク先をご覧ください。
何にせよ、素人がテレビやネットで手に入れた情報だけで名探偵を気取って「これは自作自演だ」「捏造だ」などと言ったところで、ほとんどの場合ただの的外れな妄想にすぎません。
「明朝体とゴシック体が同じ文書で混在しているのはおかしい。強調なら太字か下線のはず。だからこの文書は捏造だ」とか
「犯人はキムチ鍋が好きだから在日韓国人だ」とか、
素人の妄想による頭の悪いデマを一体どれだけ見てきたことか…。正直頭が悪いというより頭がおかしいというレベルだと思う。
この手のバカにならないためには、まず、当たり前の作法として、「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と考えるのはやめましょう。大抵の場合、騙されているのは自分の方です。こんな思い込みは、宗教に入信して「私は世界の真実を知った」とか思うのと同じレベルです。
アポロの場合であれば、ソ連も含めて世界中が騙される、もしくは米政府の捏造に協力するなんてことは常識的にあり得ませんし、安田氏の件であれば、シリア人権監視団、トルコ政府、カタール政府、日本政府のすべてが騙されるなんてことは常識的にあり得ません。
真実に気づくのはネットの前に座ってるだけの素人の貴方ではない
もちろん、世の中には何年も世界中を騙し続けたような驚きの事件もたまに発生します。例えば9.11テロの生存者だと偽り、ワールドトレードセンター生存者ネットワークの会長にまでなり、9.11テロ現場ツアーの解説などをやり全米中にその名と顔が知られていたタニア・ヘッドという女性が、実は当時NYにはおらず、彼女の話は全て作り話であったという事件がありました(参照)。これなんかは、まさに世界が騙された仰天ニュースですが(実際『世界仰天ニュース』で取り上げられてた)、これを暴いたのは『NYタイムズ』やバルセロナの地元紙でした。
専門家も含めて世界中が騙されるなんてことはまずそうそう起こりませんし、起こったとしても、真実を暴くのは、やはり別の専門家か、取材を行ったジャーナリストか、現場にいた当事者です。ネットやテレビの映像で情報を得ているだけの貴方では決してありません。
基本的には専門家に耳を傾けるべきで、素人が「旗が揺れてる」とか「フォントが違う」とか「3年間拘束されていたのに元気すぎる」とか言ったところで、ただのアホの妄言にしかなりません。ド素人の我々が気づくようなことを、大勢の専門家、特にアポロや今回のように、世界中の専門家や当事者がこぞって見逃すなんてことはあり得ません。
素人考えで、テレビに映った被害者の表情だけ見て、「元気すぎる。拘束されてたなんて嘘だ。自作自演だ」とか言っても、それが真実である可能性はほどんどありません。それでもどうしても納得がいかないときには、「捏造だ」「自作自演だ」なんて妄想するんじゃなくて、判断を保留しましょう。
繰り返し言います
「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と思った場合、ほぼ間違いなく騙されているのは貴方の方です。
そして、仮に実際に世間が騙されていた場合、真実を暴くのは当事者か、専門知識を持った者か、取材をしたジャーナリストであり、素人の貴方ではありません。
世界中の専門家が気づけていない真実を素人の貴方が気づくなんてあり得ません。素人が「世間は騙されてるけど自分は真実を知った」なんて思い込むのは、宗教的選民思想です。そういうアホにならないためには、「わからないことはわからない」と素直に認める謙虚さが必要ですね。
なお、勘違いするネトウヨがいそうなので先に言っておきますが、このブログでは一度も「世間は騙されているけどオレは真実を知った」系はやったことはありません。このブログの基本スタンスは「世間は騙されているけどオレは真実を知った」と思い込んでる奴に、公表されている統計データなどを突き付けて「そんな真実存在せんわ!」と言ってやることです。
よく「常識を疑え」と言いますが、常識を疑う前に常識を身につけましょうね。
追記:極右ゴミクズデマ雑誌『WiLL』、自作自演説を垂れ流し敗訴
この世に存在する価値の一片もない、バカが作りバカが読む極右ゴミクズデマ雑誌『WiLL』もこのデマを垂れ流していたんですね。2021年に名誉棄損で訴えられて敗訴しています。

マジでこういう極右妄想ゴミクズ雑誌は存在自体が害しかありませんね。この地球から一掃されてほしいものです。
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