<今回のデマ>
- デマ:
- 民主党は上下院とも前回から大幅に後退した。
- 民主党は上院下院で敗れながら大統領選だけ勝利していておかしい。
- バイデンの8000万票は多すぎ。「裏に何かある」と考えるのが常識。
- 2人で1億5000万票なんて「異常な選挙」で「常識では考えられない」。
- 事実:
- 民主党は上院では1議席増やし、下院では2年前の選挙よりは減らしたものの過半数を確保し勝利している。「上下院とも前回から大幅に後退」はデマ。
- 1/3改選のなかで議席を伸ばした上院、全議席改選で過半数を維持した下院とも、民主党の勝利と言ってよく、「大統領選だけ勝利」はデマ。
- バイデンの8000万票は全体の投票率の高さによるもの。トランプも7400万票も取っている。もともと世論調査でバイデン優勢が伝えられていたのだから、バイデンがトランプより数百万票多く取ることは予想の範疇。
- 投票率は66.7%で、極めて常識的な数字にすぎない。例年より5~7%ほど高いが、郵便投票の拡大により投票率が高くなることは選挙前から予想されていた。
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またもや全く単純な事実関係さえ間違ってるデマが流れています。
>>しかし“大統領選だけは勝利”した。
>>しかもこれ迄の最多を1千万票も上回る8千万票を獲得して…。
>>「あり得ない。これは大規模な詐欺なのだ」
>>「私は自分の為でなく私に投票した7400万人の為に戦っている」
>>とトランプ氏。
>>だがジャーナリズムには通じない。理解不能。
よくもまあ、こんなデタラメを。ここで門田隆将が言ってることは間違いまくってますので、指摘しておきましょう。
まず、上院。アメリカの上院は各州2人の計100人で、2年ごとに3分の1が改選されます。2018年の選挙では、全米での得票率は民主党は52,224,867票、共和党は34,722,926票だったものの、小選挙区制であるため、結果的に民主党は47議席から45議席に落とし、共和党は51議席から53議席に増えました。
今回大統領選と同時に行われた上院選では民主党と共和党がともに50議席になりました。
結果、
共和党 53→50
民主党 47→50
となり、民主党は3議席伸ばしたのです。はたしてどの辺が上院で民主党が「大幅に後退」しているのでしょう?
下院選挙では、確かに民主党は議席に減らしました。しかし、それは2年前、2018年の選挙の時に、過半数を大幅に上回る235議席を得たからです。
下院は2年ごとに全議席が改選されます。ここ数年の下院の議席数の動きを見てみましょう。(太字は過半数を取った方)
年 共和党 民主党 (大統領)
2008 178 257 オバマ
2010 242 193 オバマ
2012 234 201 オバマ
2014 247 188 オバマ
2016 241 194 トランプ
2018 199 235 トランプ
2020 211 222 バイデン
ご覧の通り、民主党は2018年に235議席を獲得しています。今回は、前回選挙ほどの得票は取れなかったものの、民主党222、共和党211で、下院でも民主党が勝利しているのです。
前回ほどは取れなかったものの民主党が勝利しているのに、「前回から大幅に後退」とは酷い印象操作です。「前回ほど大勝はできなかった」だけです。
門田氏は上院でも下院でも、民主党は「前回より大幅に後退」と言い、「大統領選だけは勝利」したというのはおかしい、と主張しています。上院でも下院でも負けたのに、大統領選だけ勝利なんておかしいじゃないか、というわけです。
ところが、上で見た通り、実際には上院で1議席増やし、下院で過半数を獲得しているので、上院でも下院でも民主党の勝利と言っていい状態なのです。なので、大統領選で民主党候補が勝利するのも当然の成り行きと言えるでしょう。
門田氏は11月29日の『産経新聞』においても、
などと言っています。彼はマスコミが8000万票という数字に疑いを向けないのは「反トランプ」だからだと思っているようです。しかし、親トランプであるFOXニュースだってそんなおかしな報道はしていません。
もしも投票率がこれまでと変わらないのにバイデンの票だけ8000万票も取ったら、疑うのもわかりますが、バイデンが8000万票取っただけでなく、トランプも7400万票を獲得しているのです。トランプの票も、過去最高だった2008年のオバマの6950万票を400万票も超えているのです。
バイデンはトランプに8%の差をつけて勝利しましたが、これは過去の大統領選と比べても、むしろ僅差と言っていいくらいです。下の表からもわかる通り、全体の投票数が増えただけで、各候補者の得票数の比は例年から見てなんらおかしなものではありません。

(↑過去の大統領選の獲得票数。太字は獲得数の多かった方)
にもかかわらず、どうしてバイデンの8000万票だけ疑い、トランプの7400万票は疑わないのでしょう? 過去最高得票よりも1000万票増やしたバイデンを疑うなら、過去最高得票より400万票増やしたトランプも疑わなければならないと思うのですが、そういうことは考えないようです。
そもそも、大統領選前の世論調査でもバイデンはトランプをリードしていました。リアル・クリア・ポリティクスでは、バイデン51.2、トランプ44.0となっていました。
( から)
激戦州の世論調査でもNYタイムズ、ワシントンポスト、CNN、ABCなどの調査で、いずれもバイデン優勢が伝えられていました。
世論調査に従えば、バイデンの8000万票よりトランプの7400万票の方がよっぽど驚くべき数字です。トランプ7400万票を基準にすれば、バイデンの8000万票は何ら驚くに値せず、むしろ予想外に少ないとさえ言えます。
バイデンが8000万票を獲得したのは全体の投票率の高さによるものであり、そのことはトランプが7400万票を獲得していることからも明らかです。これでバイデンの8000万票だけ「裏に何かある」と主張するのは理解不能です。裏に何かあるとすれば、単にコロナなどの特殊事情による投票率の高さでしょう。
勝手な空想をする前に、これぐらいの事実関係はちゃんと調べてもらいたいものです。
上で「バイデンの8000万票を疑って、トランプの7400万票を疑わないのはおかしい」と書きましたが、どうやら本人も気づいたのか、「2人で1億5000万票が超が投じられた異常な選挙」と言い出しました。
はて? 「異常な選挙」「常識では考えられない」と言っていますが、どの辺が異常で、常識では考えられないのでしょうか?
今回の大統領選は、120年ぶりの高投票率と言われていますが、それでも投票率は11月16日時点で66.7%です。66.7%の投票率がどうして「常識では考えられない」ことになっているのでしょうか? フランスや韓国の大統領選なんて、80%近い投票率があるんですが。
「常識では考えられない」どころか、逆に常識的判断力があれば、コロナで郵便投票が増えたからだと分かるはずです。郵便投票によって投票率が上昇することは何カ月も前からわかっていたことです。『WIRED』の記事によれば、ユタ州で行われた2018年の調査で
とのことです。2008年、オバマが過去最高得票を得た時の投票率は61.2%でした。4年前は59.2%です。今回は66.7%ですから、在宅投票により投票率が5~7%上昇したというユタ州の調査と合致していますね。実際、10月27日の時点で、4200万人が郵便投票を済ませたと報道されています。投票率66.7%は、「裏に何かある」ものでも「常識では考えられない」ことでもなく、極めて常識的に説明がつく現象です。
(※上記リンク先の投票率の票の「Voting Age Population (VAP)」「Voting Eligible Population (VEP)」の説明はこちら)
門田はさらに「アリゾナ州は公聴会の最中にバイデン勝利を正式認定」と言っていますが、この「公聴会」とは、共和党議員がホテルにQアノンみたいな連中を呼んで、ネットで流れてるようなデマをみんなで聞く会にすぎません。
「不正があった」と心の底から信じ切っている人にとっては、「不正があった」と言い続けるのが「民主主義を守る戦い」になってるようですが、その実態は、デマで選挙結果を捻じ曲げようとする「民主主義を壊す戦い」以外の何物でもありません。
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またもや全く単純な事実関係さえ間違ってるデマが流れています。
>>民主党は上下院とも前回から大幅に後退。民主党は上下院とも前回から大幅に後退。しかし“大統領選だけは勝利”した。しかもこれ迄の最多を1千万票も上回る8千万票を獲得して…。「あり得ない。これは大規模な詐欺なのだ」「私は自分の為でなく私に投票した7400万人の為に戦っている」とトランプ氏。だがジャーナリズムには通じない。理解不能。 https://t.co/OtzdWb2uj9
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) November 30, 2020
>>しかし“大統領選だけは勝利”した。
>>しかもこれ迄の最多を1千万票も上回る8千万票を獲得して…。
>>「あり得ない。これは大規模な詐欺なのだ」
>>「私は自分の為でなく私に投票した7400万人の為に戦っている」
>>とトランプ氏。
>>だがジャーナリズムには通じない。理解不能。
よくもまあ、こんなデタラメを。ここで門田隆将が言ってることは間違いまくってますので、指摘しておきましょう。
1.「民主党は上院下院とも大幅に後退」は嘘(上院編)
まず、上院。アメリカの上院は各州2人の計100人で、2年ごとに3分の1が改選されます。2018年の選挙では、全米での得票率は民主党は52,224,867票、共和党は34,722,926票だったものの、小選挙区制であるため、結果的に民主党は47議席から45議席に落とし、共和党は51議席から53議席に増えました。
今回大統領選と同時に行われた上院選では民主党と共和党がともに50議席になりました。
結果、
共和党 53→50
民主党 47→50
となり、民主党は3議席伸ばしたのです。はたしてどの辺が上院で民主党が「大幅に後退」しているのでしょう?
2.「民主党は上院下院とも大幅に後退」は嘘(下院編)
下院選挙では、確かに民主党は議席に減らしました。しかし、それは2年前、2018年の選挙の時に、過半数を大幅に上回る235議席を得たからです。
下院は2年ごとに全議席が改選されます。ここ数年の下院の議席数の動きを見てみましょう。(太字は過半数を取った方)
年 共和党 民主党 (大統領)
2008 178 257 オバマ
2010 242 193 オバマ
2012 234 201 オバマ
2014 247 188 オバマ
2016 241 194 トランプ
2018 199 235 トランプ
2020 211 222 バイデン
ご覧の通り、民主党は2018年に235議席を獲得しています。今回は、前回選挙ほどの得票は取れなかったものの、民主党222、共和党211で、下院でも民主党が勝利しているのです。
前回ほどは取れなかったものの民主党が勝利しているのに、「前回から大幅に後退」とは酷い印象操作です。「前回ほど大勝はできなかった」だけです。
3.「大統領選だけは勝利」は大嘘:上院下院全て民主党の勝利
門田氏は上院でも下院でも、民主党は「前回より大幅に後退」と言い、「大統領選だけは勝利」したというのはおかしい、と主張しています。上院でも下院でも負けたのに、大統領選だけ勝利なんておかしいじゃないか、というわけです。
ところが、上で見た通り、実際には上院で1議席増やし、下院で過半数を獲得しているので、上院でも下院でも民主党の勝利と言っていい状態なのです。なので、大統領選で民主党候補が勝利するのも当然の成り行きと言えるでしょう。
4.事実を調べることを忘れるなかれ
門田氏は11月29日の『産経新聞』においても、
バイデン票は初の黒人大統領誕生として熱狂の渦の中、史上最多票となったオバマ氏を1千万票も上回る8001万票となった。「裏に何かある」と考えるのが常識だろう。だが反トランプで固まったマスコミにそんな報道があるはずがなかった。
などと言っています。彼はマスコミが8000万票という数字に疑いを向けないのは「反トランプ」だからだと思っているようです。しかし、親トランプであるFOXニュースだってそんなおかしな報道はしていません。
もしも投票率がこれまでと変わらないのにバイデンの票だけ8000万票も取ったら、疑うのもわかりますが、バイデンが8000万票取っただけでなく、トランプも7400万票を獲得しているのです。トランプの票も、過去最高だった2008年のオバマの6950万票を400万票も超えているのです。
バイデンはトランプに8%の差をつけて勝利しましたが、これは過去の大統領選と比べても、むしろ僅差と言っていいくらいです。下の表からもわかる通り、全体の投票数が増えただけで、各候補者の得票数の比は例年から見てなんらおかしなものではありません。

(↑過去の大統領選の獲得票数。太字は獲得数の多かった方)
にもかかわらず、どうしてバイデンの8000万票だけ疑い、トランプの7400万票は疑わないのでしょう? 過去最高得票よりも1000万票増やしたバイデンを疑うなら、過去最高得票より400万票増やしたトランプも疑わなければならないと思うのですが、そういうことは考えないようです。
そもそも、大統領選前の世論調査でもバイデンはトランプをリードしていました。リアル・クリア・ポリティクスでは、バイデン51.2、トランプ44.0となっていました。
( から)
激戦州の世論調査でもNYタイムズ、ワシントンポスト、CNN、ABCなどの調査で、いずれもバイデン優勢が伝えられていました。
世論調査に従えば、バイデンの8000万票よりトランプの7400万票の方がよっぽど驚くべき数字です。トランプ7400万票を基準にすれば、バイデンの8000万票は何ら驚くに値せず、むしろ予想外に少ないとさえ言えます。
バイデンが8000万票を獲得したのは全体の投票率の高さによるものであり、そのことはトランプが7400万票を獲得していることからも明らかです。これでバイデンの8000万票だけ「裏に何かある」と主張するのは理解不能です。裏に何かあるとすれば、単にコロナなどの特殊事情による投票率の高さでしょう。
勝手な空想をする前に、これぐらいの事実関係はちゃんと調べてもらいたいものです。
追記:今度は「2人で1億5000万票なんて異常」と言い出す
上で「バイデンの8000万票を疑って、トランプの7400万票を疑わないのはおかしい」と書きましたが、どうやら本人も気づいたのか、「2人で1億5000万票が超が投じられた異常な選挙」と言い出しました。
アリゾナ公聴会での証言にアメリカ人は衝撃を受けている。バイデン氏が8千万票超、トランプ氏が7400万票、2人で1億5千万票超が投じられたという異常な選挙。それが“常識では考えられない”事が分るからだ。だがアリゾナ州は公聴会の最中にバイデン勝利を正式認定。民主主義を守る闘いは更に熾烈に。 https://t.co/NHkqTVwA6f
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) December 1, 2020
はて? 「異常な選挙」「常識では考えられない」と言っていますが、どの辺が異常で、常識では考えられないのでしょうか?
今回の大統領選は、120年ぶりの高投票率と言われていますが、それでも投票率は11月16日時点で66.7%です。66.7%の投票率がどうして「常識では考えられない」ことになっているのでしょうか? フランスや韓国の大統領選なんて、80%近い投票率があるんですが。
「常識では考えられない」どころか、逆に常識的判断力があれば、コロナで郵便投票が増えたからだと分かるはずです。郵便投票によって投票率が上昇することは何カ月も前からわかっていたことです。『WIRED』の記事によれば、ユタ州で行われた2018年の調査で
在宅投票を導入した郡では導入していなかった郡と比べて、投票率が5〜7パーセント改善したことがわかっている
とのことです。2008年、オバマが過去最高得票を得た時の投票率は61.2%でした。4年前は59.2%です。今回は66.7%ですから、在宅投票により投票率が5~7%上昇したというユタ州の調査と合致していますね。実際、10月27日の時点で、4200万人が郵便投票を済ませたと報道されています。投票率66.7%は、「裏に何かある」ものでも「常識では考えられない」ことでもなく、極めて常識的に説明がつく現象です。
(※上記リンク先の投票率の票の「Voting Age Population (VAP)」「Voting Eligible Population (VEP)」の説明はこちら)
門田はさらに「アリゾナ州は公聴会の最中にバイデン勝利を正式認定」と言っていますが、この「公聴会」とは、共和党議員がホテルにQアノンみたいな連中を呼んで、ネットで流れてるようなデマをみんなで聞く会にすぎません。
「不正があった」と心の底から信じ切っている人にとっては、「不正があった」と言い続けるのが「民主主義を守る戦い」になってるようですが、その実態は、デマで選挙結果を捻じ曲げようとする「民主主義を壊す戦い」以外の何物でもありません。
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