<今回のデマ>
  • ウィンストン・チャーチルは「二十歳までに共産主義にかぶれない者は情熱が足りないが、二十歳を過ぎて共産主義にかぶれている者は知能が足りない」と言った
<事実>
  • ロンドンに本部を置く国際チャーチル協会によれば、チャーチルはそのような発言をしたことはない。
  • 英国の歴史家であるポール・アディソン氏によれば、チャーチルは15歳まで保守で、35歳の時にはリベラルだったうえに、チャーチルの妻は生涯リベラルだったとのこと。
  • 有名人の発言として世間に出回っているものにはデマが多い。初出がわからない発言を容易に信じてはいけない。
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↑チャーチルに限らず、有名人の発言として出回っているものには嘘も多い。初出がわからないものは鵜呑みにしてはいけない。

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このブログでずっと見てきたように、1つのデマに騙されている奴は必ず他のデマにも出されています。これもそのデマの例の一つです。
>>うわあ。芸能人が「大人」になると、左に騙される典型。
>>普通の日本人は中2で経験する。
>>伝ウィンストン・チャーチル
>>「20歳で共産主義に心ひかれなければ、心がない。
>>30歳で共産主義に心ひかれれば、頭がない」


「芸能人が『大人』になると、左に騙される」というのも、「普通の日本人は中2で経験する」というのも意味不明ですが、このブログにも同じ書き込みが来たことがあります。

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>>左翼思想こそハタチまでに卒業しておかないと恥ずかしいものですな。
>>「二十歳までに共産主義にかぶれない者は情熱が足りないが、二十歳を過ぎて共産主義にかぶれている者は知能が足りない。」by ウィンストン・チャーチル


「左翼」=「共産主義」と考えているなど、実に頭の悪さがにじみ出ているコメントですが、そもそもチャーチルはこんなこと言っていません。


英国に「International Churchill Society」(国際チャーチル協会)ってのがありまして、そこのホームページに、「チャーチルの言葉として知られているけど、本当は言ってないこと」という一覧が載っています。



その「本当は言っていないこと」の中に、先ほどの「ハタチまでに共産主義…」と同じ内容のものがあります。
‘If you’re not a liberal when you’re 25, you have no heart.  If you’re not a conservative by the time you’re 35, you have no brain.’

There is no record of anyone hearing Churchill say this. Paul Addison of Edinburgh University made this comment: ‘Surely Churchill can’t have used the words attributed to him. He’d been a Conservative at 15 and a Liberal at 35!  And would he have talked so disrespectfully of Clemmie, who is generally thought to have been a lifelong Liberal?’

「25歳までにリベラルにならなかったら、心が足りない。35歳までに保守にならなかったら、知能がない」

チャーチルがこういったという記録はどこにもない。エジンバラ大学のポール・アディソンはこう述べている。

「チャーチルがこう言ったと言われているが、そんなことはありえない。彼は15歳まで保守で、35歳の時にはリベラルだった! それに、どうして彼がクレミー(※チャーチルの奥さん)のことを悪く言うんだ? 彼女は生涯リベラルだったんだぞ」
「共産主義」「リベラル」、「20歳」「25歳」などの差はあるものの、いずれにしろチャーチルがこのような発言をしたということを、チャーチル協会は完全に否定しています。


「左翼思想こそハタチまでに卒業しておかないと恥ずかしい」とか言ってますが、左翼とか右翼とか以前に、デマに飛びつくことこそ、ハタチまでに卒業しておかないと恥ずかしいですね。



「有名人の言葉」にご注意


チャーチルだけでなく、世間で出回っている有名人の言葉には、嘘がかなり含まれています。


例えば、アインシュタインが「最も尊い日本が世界の盟主になる」と言ったというものがあります。



実際には、アインシュタインはこんなこと言っておらず、田中智學という人が、シュタイン博士の発言として捏造したものが、間違って「アインシュタインの言葉」として世間に広まったらしいです。だから2重に間違ってる。


インドネシアのムルトポ准将が「韓国の成功は、100%日本のおかげ」とか「我々は戦前に日本から受けた恩に今でも感謝している」とか「日本人が戦ってくれなければ、私たちの国は存在すらしていない。永遠に忘れることができない恩なのだ」とか言ったとか広まってますが、これもデマ。




サンフランシスコ講和会議で、スリランカ代表だったジャヤワルダナ氏が
「日本はアジアの希望」
「日本の戦争は東南アジア諸国が独立するための力となった」
「大東亜共栄圏構想は間違いではなかった」
と言い、彼が日本の分割統治案に反対したおかげで分割統治されずに済んだとかいう話も出回っていますが、もちろんデマ。



これ信じてる奴、本当にバカすぎるだろ…。なんで1951年のサンフランシスコ講和会議での演説が1945年の分割統治案を食い止められるんだよ。ちなみにジャヤワルダナ氏が反対したのは分割統治ではなく領土の割譲。また、ジャヤワルダナ氏は逆に日本の行為を「侵略」とはっきり言っています。そのうえで「日本を許そう」と言っているのであって、「日本はアジアの希望」だの「日本は間違っていなかった」だの全く言っておりません。


他にも、タイのククリット・プラモード首相が「日本のおかげでアジアは独立できた」とか「日本というお母さん」とか発言したというのも、保守界隈で広まってますが、これもデマ。




この手の有名人発言は、いったん誰かが言い出したら、独り歩きして広まっちゃって、「デマだ」という証明をするのがすごく難しいんですよね。「初出が見つけられない」ということは、「そういう発言はしていない」という証拠にはならないので、デマだと証明することができないまま拡散しちゃうし、デマだと証明できても、最初に紹介した頭の悪いコメント主のような人は、そんなこと気にせずに拡散しちゃう。


でも、この手の外国人による「日本の戦争は間違っていなかった」「日本のおかげで独立できた」系の話は、出典が確認できないものがほとんどです。上で紹介したアインシュタインデマも、ムルトポ准将デマも、プラモード首相デマも、どうやら出典は全て名越二荒之助という人物による創作(捏造)のようです。この手の話は明確な初出が確認できない限り信じないようにしましょう。


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